経営セカンドオピニオン協会理事の中島宏明が、FPデザインの代表取締役会長兼CEO・石本導彦氏と対談。コロナ時代を生き残るための非接触型リモートセールスや顧客との本質的な信頼関係の構築を実現する専門性と永続性を兼ね備えたオーダーメイドの金融サービスについてお話を伺いました。
石本導彦氏 プロフィール
FPデザイン 代表取締役会長兼CEO
リグア(マザーズ 証券コード:7090) 取締役副社長
2020年度MDRT成績資格終身会員(20年連続)/Top of the Table
IFA/独立系ファイナンシャルアドバイザー
CRM資格/日本リスクマネジメント協会認定最高位資格
一般社団法人相続診断協会/相続診断士
コロナショックで一気にリモートセールスへシフト
中島宏明理事(以下、中島)――対面営業を重視してきた各生命保険会社ですが、新型コロナウイルスの影響でお客様と直接お会いすることは難しくなっていると言います。
第一生命は、大手生保で初めてすべての商品をインターネットで販売できるようにするという方針を打ち出しましたし、明治安田生命も来年4月からインターネットでの保険の加入手続きを始める予定と発表されています。また、プルデンシャル生命保険では、オンラインセールスに関する社内コンテストを開催し、非接触・非対面でもわかりやすく伝える工夫を競い合っています。手書きのパネルを活用したり、クイズ形式にしたり、人生ゲームに例えて資産運用を説明するなどの工夫がされているそうです。石本さんは、保険業界に20年以上携わっていますが、この変化をどう感じていらっしゃいますか?
石本導彦氏(以下、石本)――かなり大きな変化だと感じていますが、決してネガティブには捉えていません。緊急事態宣言期間中、やはりお客様と直接お会いすることはできませんでした。ですが、その分「どう工夫すれば良いのか」「自分にできることはなにか」を考える機会になったと思います。普段ですと、考えて仮説を立てて実行して改善するというサイクルなのですが、「とにかくやってみる」ということに集中しました。
中島――PDCAサイクルではなく、ある意味DDDD(ドゥ・ドゥ・ドゥ・ドゥ)というわけですね。どのような工夫をされたのでしょうか?
石本氏――Zoomでお客様とコミュニケーションを取ることが多いのですが、やはりまだ不慣れな方も多くいらっしゃいます。そんな方には、事前にお電話などで操作方法をお伝えしたり、ご年配の方には、Zoomの画面共有だけではなく事前に紙で資料をお送りしてZoomの画面でお見せしながらご説明したりしました。そういった小さな工夫の積み重ねが大切だと思います。
新型コロナの影響下でもアポ件数は1.5倍以上に増加
中島――コロナ前とコロナ後では、どのような変化がありますか?
石本氏――リモートが中心になりますと、移動がありませんから時間の使い方が変わりました。例えば、リアルですと1日に4件ほどの商談が限界でした。ですが、リモートですとプラス2~3件可能です。1日に6~7件の商談ができるというのは、大きな変化だと思います。
私は、大坪勇二さんという元ソニー生命保険の方の仕事術を参考にしているのですが、改めて大坪さんの本を読み返しました。『手取り1655円が1850万円になった営業マンが明かす月収1万倍仕事術(ダイヤモンド社)』という本のなかに、「16分割週間スケジュール」というノウハウが出てきます。1日の働く時間を3時間ごとに区切って4分割し、月曜から木曜までの16マスの中、15マスに必ず面談を入れるという方法です。それでリアルですと1日4件の商談ということになっていたのですが、リモートになってからはマスの数が増えましたね。
中島――それは良い変化ですね。石本さんは、リアル(オフライン)とリモート(オンライン)の商談・営業活動では、どちら方がやりやすいと感じますか?
石本氏――リアルよりもリモートの方が良いですね。リモートに対してネガティブな要素はありません。ただ、気をつける点は変わってきます。例えば、Zoom画面をパッと開いた瞬間が第一印象を決めるわけですから、カメラの解像度や照明も重要になってきます。また、スケジュールを効率的に入れることができますが、休憩なく予定を入れてしまい働き過ぎてしまう面もあります。1日何件・何時間くらいが無理なくこなせるかは個人差がありますから、今後の採用や人材育成を考えますと、その個人差をうまく汲み取りながら人材を育てる必要がありますね。オンラインだと目線が合いにくいなど、リアルとは違うことも多くあります。リアルでの商談経験・ノウハウをそのままリモートには流用できないと感じています。
中島――なるほど。リモートにはリモートのノウハウがあるわけですね。石本さんでしたら、そのノウハウを体系的に構築していただけそうです。
石本氏――日々工夫しているところです。リモートですと、言葉(音声)のやり取りが中心になりますが、それでもノンバーバルコミュニケーション(非言語コミュニケーション)が重要で、成果にも影響すると感じているところです。
専門性と永続性を兼ね備えたオーダーメイドの金融サービスで金融業界に革命を
中島――石本さんの場合、アポはどのようにして取っているのですか?
石本氏――ほとんどがパートナーからの紹介です。パートナーというのは、税理士の先生やコンサルタントの方、経営者の方のことです。これは、コロナ前から変わっていません。
中島――いわゆるつながり経済ですね。弱き紐帯という言葉がありますが、緩やかな関係性の中からビジネスにつながっていくということはありますよね。
石本氏――そうですね。とてもありがたいことです。
中島――石本さんが営業において気をつけていることなどはありますか?
石本氏――売ることを考えないことです。商談の前日や直前にロープレをする保険営業の方は多いと思いますが、私の場合はロープレはしません。全くしないというわけではないのですが、基本的にはほとんどしませんね。代わりにしているのは、お客様の健康と幸せを祈ることです。私が8歳の頃に母が保険の仕事を始めたのですが、私はその背中を見て育ちました。保険の仕事は、お客様のお役に立てるとても意義のある仕事だと感じています。やはりこの仕事のベースにあるのは、お客様の健康と幸せを祈ることだと思っています。
中島――それは素晴らしい姿勢ですね。保険営業というと、常に新規顧客の開拓=数字に追われているというイメージが強く、「どう売るか」を常に考えている印象がありますが。
石本氏――私たちには、「専門性と永続性を兼ね備えたオーダーメイドの金融サービスをお客様一人ひとりにあった形で安価にご提供したい」という想いがあります。日本の場合、投資家・消費者保護の観点が強くなっており、正しくリスクテイクして資産構築していく、必要に応じて資産の組替を継続的に行っていくという習慣がなかなか根付いていません。金融、お金に対するリテラシーも、残念ながら他国に比べて決して高いとは言えないと感じています。
中島――確かに、「金融は難しいもの」「お金のことを話すのは恥ずかしい」「銀行や証券会社の専門家に任せておけばいい」という人が多いですね。
石本氏――はい、思い込みがあると思います。私たちが一番お伝えしたいメッセージは、「だれもがワクワク自由に生きることができる」ということで、その手段としてさまざまな金融サービスを活用することができるということなのです。お客様が本当に実現したいことを会話のなかから引き出し、日本ではあまり知られていない世界における資産運用の標準値や、収入・資産からどうバランスを取りながら資産運用していくかなどを知っていただき、リスクを理解して運用すること。本当に実現したいことに達するように、ライフスタイルとともに専門性と永続性を兼ね備えたオーダーメイドの金融サービスをお客様一人ひとりにあった形で安価にご提供することが私たちの存在意義です。単なる保険代理店業ではない、本質的なサービスをご提供できると思います。
中島――海外では、例えばスイスのプライベートバンクやファミリーオフィスなどのサービスがありますよね。プライベートバンカー・トラスティ(管財人)は、取引手数料による報酬体系ではないので、むやみやたらと売買を進めてきませんし、資産を預ける人のメリットになるよう長期的な視点を常に持って考えてくれます。
石本氏――まさに、プライベートバンクやファミリーオフィスの方式がモデルですね。日本ではどうしてもノルマに追われてしまい、お客様第一主義になっていないという実情があります。大手企業の場合、オフィスや人件費などの維持コストがかかりますが、私たちはベンチャーですから、ベンチャーだからこそできるサービスがあると考えています。
中島――今年3月には、FPデザインの親会社であるリグアがマザーズ上場を果たしましたから、上場前に比べるとビジネス展開もしやすくなるのではないでしょうか。今後、リグアとFPデザインが業界革命を起こしていく可能性は大いにありますね。
石本氏――実現できるよう、がんばっていきます。金融リテラシーを高めることは、本質的な豊かさを知ったり気づいたりすることにもつながり、それの教育はこどもの頃から必要で、小さな頃から豊かさについて考える機会があるというのはとても大切なことだと思います。人生100年時代を言われていますし、親から子へ、さらに孫、ひ孫へと資産とともに考え方、哲学のようなものが受け継がれていくことも重要ですね。
中島――本質の時代ですから、哲学がとても大切ですよね。本日はありがとうございました。