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今の日本は本当に経済的にダメな国なのか

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「日本経済は衰退していくしかない…」というネガティブなニュースが多く出回っていますが、本当にそうなのでしょうか。よく北欧の国々が「理想の国」として取り上げられますが、すべてが完璧な国や地域など存在するのでしょうか。日本の人口1人当たりのGDPや人口減少についての記事をご紹介します。

日本は人口1人当たりGDPで発展途上国になってしまった?

「今の日本はとにかくダメ」という議論で「日本はダメ派」がよく持ち出してくるファクトに、人口1人当たりGDP(国内総生産)における日本の地位低下があります。かつては世界ランキングの上位にいた日本がずるずると順位を下げ、他の先進国の後じんを拝している。もはや日本は発展途上国だ――という主張です。

そもそも、「1人当たりGDP」という大ざっぱな指標がその国の経済力や豊かさを正確に捉えているかどうかには議論の余地がありますが、ここでは国際比較可能な簡便な指標という程度の意味で、この四半世紀の1人当たりGDPの国別ランキングとその推移を振り返っておきましょう。表は1990年から5年おきに2018年(入手可能な最新年)までの1人当たりGDPのトップ10をまとめたものです。GDPの4大大国(米国、中国、日本、ドイツ)については、別枠でそれぞれ順位の推移を示してあります。

「日本はダメ」という言説を疑え! 判断を惑わす罠を回避するには?|日経ビジネス

1人当たりGDPにおける日本、米国、ドイツ、中国の順位の推移

出所:国際通貨基金(IMF)

表を見ればすぐ分かるのですが、分母が人口という指標の性質からして、このランキングは人口の少ない小国に有利となります。この20年は「ルクセンブルク最強」という時代が続いています。ルクセンブルク以外にも、スイス、マカオ、ノルウェー、カタール、アイルランドといった小国がトップテンの常連です。

ちなみに、このデータは国際通貨基金(IMF)の統計によるものですが、さらに多くの国や地域を含んでいる国連統計を使うと、この期間のトップは常にモナコかリヒテンシュタインのどちらかです(ルクセンブルクは大体3位か4位)。他にもバミューダ、ケイマン諸島、英領バージン諸島といった「国」とは呼べないような地域が上位に顔を並べています。国連統計では、大国の米国ですら表にある7時点で1回も上位10カ国には入ってきません(ただし日本は1995年と2000年に、それぞれ6位と8位でトップ10入りしている)。

話をIMF統計に基づいたランキングに戻しますと、1990年から2000年までの10年間、日本は人口1億人以上の大国でありながらトップ10に顔を出してくるまれな国でした。その順位は世界一の経済大国である米国よりも上で、2000年にはなんと絶対王者のルクセンブルクに次いで2位につけています。ところが、2005年にはトップテンから陥落し(15位)、2010年には18位、その後さらに順位を下げて、2015年と2018年は26位です。

多くの年でランキング入りしている米国はもちろん、20位前後と安定的に推移しているドイツと比べて、いかにも日本の衰退が目立ちます。指標の性質からして、このランキングは為替レートにあからさまな影響を受けますが(1990年代のように円高になると日本は上位にくる)、日本の生産力そのものが相対的に落ちているのは確かです。

「日本はダメ」という言説を疑え! 判断を惑わす罠を回避するには?|日経ビジネス

日本が衰退しているように見える統計資料はいくらでもあります。経済力が「人口×生産性」であることは確かですが、GDPという古臭い概念だけで経済力や国力は測れないでしょう。

すべてがうまくいっている国はない

ただし、です。この簡単なデータを見るだけでもいくつかの面白い事実が指摘できます。第1に、停滞する日本が多くの課題を抱えているのは確かですが、だからといってランキングの上位にいる国や地域に問題がないかといえば、全くそんなことはありません。経済的な側面に限定しても、それぞれに深刻な課題を抱えています。

例えば、カタール。今世紀に入ってからはランキングの常連ですが、天然ガスに極度に依存した一本足打法の産業構造です。資源産出国として未曽有の経済的豊かさを享受している一方で、政治的な緊張もあって、今後の国のかじ取りはいよいよ難しい時期に来ています。ここ数年間、著者の楠木はカタールの公的部門や企業の人々と年に1回会って議論する機会を得ています。彼らの生の声を聞いていると、今後のカタールの難しさは日本のそれをしのぐように思えます。

第2に、中国の「豊かさ」です。中国は日本を抜いて世界第2の経済大国となり、そのうち米国を抜き世界一になることはほとんど確実です。「今の日本はとにかくダメ」という人は中国の台頭を強調し、それと比べて日本は取り残されている、もはや未来がない、と嘆きます。中国は1人当たりGDPでも1990年以来大きく順位を上げています。しかし、それでも72位です。

これがどのような位置づけかというと、赤道ギニア(70位)やメキシコ(71位)よりもまだ下なのです。それもこれも中国が人口規模の点で超大国だからです。言い換えれば、あれだけの人口を擁するからこそ世界第2の経済大国となり得たわけです。人口1人当たりで見れば中国の豊かさは「世界第2の経済大国」のイメージとは大きなギャップがあります。

しかも、このところの香港統治問題に表れているように、一党独裁制と資本主義的経済活動との間には根源的な矛盾があります。経済成長を続けるほど、中国が抱える無理難題はますます大きくなるわけで、中国ほど統治が難しい国はないといってもよいでしょう。要するに、世界のどこを見ても、ごく一部の小国を別にすれば、「うまくいっている国」などどこにもないということです。

第3に、これが最も声を大にして言いたいことなのですが、人口1人当たりGDPで日本が上位にあった1990年代後半、当の日本における同時代の空気はどうだったでしょうか。この指標の性質からして、日本のような人口1億人以上の大国が2位や3位になるということはほとんど奇跡的な「成果」です。

ところが、です。人々が当時何を言っていたのかを思い返してみてください。今と全く変わらず「日本は最悪だ」という議論に明け暮れていました。バブル崩壊にもかかわらず不良債権の処理は進まない。日本的経営は崩壊し(20年後の今も順調に崩壊し続けているのは既に見た通り)、抜本的な改革が求められているにもかかわらず企業は変われず、イノベーションも出てこない――。「ついに1人当たりGDPでもルクセンブルクに次いで世界第2位になった!」と国民総出でちょうちん行列に繰り出してもよさそうなのに、「今の日本はとにかくダメ!」と言っていたのです。

1人当たりGDPが2位でもダメ、26位でもダメ。「いったいどうすりゃいいんだよ!」と思わず言いたくなりますが、これこそ遠近歪曲トラップの最たるものです。

「日本はダメ」という言説を疑え! 判断を惑わす罠を回避するには?|日経ビジネス

考えてみれば当たり前のことですが、経済成長の著しい中国や東南アジア諸国、ほか新興国であっても、「理想の国」としてランキング入りする北欧の国々であっても、完璧な国や地域はありません。どの国・地域も、なんらかの課題を抱えています。治安、紛争、雇用、出生率、自殺率、移民…など、課題はいくらでもあるでしょう。どう課題に向き合い、対応していくかは、世界のどこにいても常につきまとうことです。

人口減が諸悪の根源?

1人当たりGDPのランキングに対する日本の人々の認識に見て取れる遠近歪曲トラップは、この章で詳細に検討した人口問題とよく似ています。人口が増えていた時代は「人口増こそ諸悪の根源」だったのに、逆に人口減に直面すると「人口減こそ諸悪の根源」ということになる。要するに、客観的状況がどうであれ、「今」「ここ」が一番悪く見えるという構図です。

全てにおいてうまくいっている国や時代はあり得ません。いつでもどこでも、良いところ悪いところ、機会と脅威がないまぜになっているのが本当のところです。さらに言えば、強みと弱みは別々に存在するわけではありません。先ほどの中国の大国ゆえの経済成長とそれが抱える課題のように、強みの裏に弱みがあります。逆もまた真なり。両者はコインの両面です。どちらから見るかで、同じことが強みにも弱みにもなりますし、機会としても脅威としても捉えられます。

以前もお話ししたように、冬になるとしきりに「寒い!」と言い、夏になったら今度は「暑い!」と言いたくなるのが人間の性分です。だからこそ、冬であっても「今は確かに寒い。しかし、幸いにして暑くはない。寒いときだからこそ、こういうことができる」という発想で将来に向けたビジョンや構想を打ち出す。ここにリーダーの役割があるわけです。多くの人々が冬の寒さを実感しているからこそ、ビジョンに共鳴し、その方向へ踏み出す気持ちになりやすいはずです。

日本が直面している少子高齢化の問題についても同じです。人口減少に歯止めをかける政策は大切です。しかし、どんなに政策的に歯止めをかけても、この先相当長い間、人口が再び増えるということはあり得ません。だとしたら、「人口減が諸悪の根源」という発想をあえて断ち切り、人口減を所与の前提として来るべき「人口7000万人の日本」についての思い切りポジティブかつリアリスティックなビジョンを描いたほうがよいのではないでしょうか。かつては人口増が親の敵のように憎まれていたことを考えると、人口減には良い面もたくさんあるはず。人口減少の先に明るい未来を描くことは十分に可能です。

「日本はダメ」という言説を疑え! 判断を惑わす罠を回避するには?|日経ビジネス

人口減少も、日本経済の衰退とセットで語られることの多い話題です。しかし、かつては「人口増こそ諸悪の根源」だった時代があるそうです。結局、人間はないものねだりの生き物なのでしょうね。

人口が減るなら減るで、それを前提にした未来像・ビジョンを描けば良いことです。悲観して生きていくよりも、どうすれば未来を築けるかを真摯に考えて実行したいですね。

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