口だけ立派な社外取締役に頼ると良い効果は得られません。しかし、先入観なしで的確な助言をしてくれる社外取締役であれば、側にいてほしいですよね。
今回は、社外取締役からのアドバイスで業績が向上したAさんの事例をご紹介します。
インドネシア進出を検討していた30代経営者
Aさんは、都内でインターネット広告運用やホームページ制作、オウンドメディア運営などの事業を展開しています。まだ30代ですが、着実に事業を拡大している経営者です。
なかじー(私のことです)って、インドネシア詳しいでしょ。今度、ジャカルタに視察に行ってみようと思ってるんだよ。あっちで、なにか事業をしたくてさ。
なにかって具体的にはなにをやりたいんです? 不動産? エビ養殖? ナマコ養殖? 飲食店? アパレルとか小売り? 金融? いろいろあるじゃないですか。いつまでに実現したいんですか? 予算は? 担当者は?
相変わらず各論から入るよね。そんなのなにも決まってないよ。とりあえずなにかできれば面白いなって思って。日本の事業は利益も結構出てるしさ。
海外進出なんてしたら、利益一瞬で消えますよ。もっと具体的に真面目に考えた方が良いんじゃないですかね。インドネシアは、進出してもすぐに撤退する企業ばっかりなんですから。
まぁとりあえず今度ランチ行こうよ。ざっくばらんにさ。お昼なら時間あるでしょ?
こうして、メッセージをもらった翌週にランチに行くことになりました。
ついつい海外に目が行きがち。でも実は…
Aさんと待ち合わせしたお店に入ると、見覚えのない人がAさんの横に座っていました。
久しぶり~、わざわざありがとうね。この人、社外取締役をやってもらってるBさん。ちょうど時間があるっていうから、せっかくだからなかじーに紹介しようと思って。Bさんは、アメリカに前住んでて、あっちで不動産と飲食店やってバイアウトして今は日本。
よろしくお願いします。インドネシアのこと、私も興味あります。
よろしくお願いします。
早速なんだけど、今、日本の事業では月2000万くらいの利益が出てる。これを活かしてインドネシア進出したい。興味があるのは、不動産か飲食かな。あっちで会社作って物件買って。立地によって住居か飲食店か、みたいな感じかな。
インドネシアは、会社を作るだけで100万円くらいかかりますよ。申請して、登記が全部終わるのに6カ月くらいです。
土地の保有はインドネシア人個人しかできないので、土地を長期で借りて建物を建てるか、借りるかですね。
住居はエリアによっては足りてないので、まだまだニーズあると思います。ただ、インドネシアは広いので、国単位じゃなくて都市単位でマーケットをみないと意味がないです。首都のジャカルタといっても広いですしね。
飲食店も、ラーメンとか日本食屋さんは、ジャカルタにはすでにたくさんありますよ。
そうなんだ。とりあえず、視察できそうな先とか店舗M&Aとか、不動産物件情報とかあったらほしいな。段階的でも1億円くらいを投資したい。
じゃあ、とりあえず情報集めてみますよ。
とAさん・Bさんと別れると、その夜にBさんから連絡があり「個別にお会いできませんか」とメッセージが入りました。
後日、Bさんにお会いすると
A社長はああ言ってたんですが、今はまだ海外に目を向ける時期ではないと思ってるんです。確かに利益は出てるんですけど、人の入れ替わりも激しくて人材が定着していません。優秀な人ほど独立してしまうので、今の事業とシナジーのありそうなサイトをM&Aで買って、独立しそうな人に新規事業を任せるのが良いんじゃないかと思ってるんです。中島さん、どう思いますか?
人が辞める話は、直接知っているマネージャーの人から聞いたことがあります。確かに、入れ替わりは激しそうですよね。Aさんの話だと、インドネシアはなんとなく興味があるくらいのレベルっぽいですし、サイトM&Aを提案してみても良いと思いますよ。
ありがとうございます。では、Aさんに話してみます。
日本国内でサイトM&Aを実行して成功
こうして、Aさんの会社はサイトを1億円ほどで買収し、既存のオウンドメディア運営事業の(辞めそうだった)リーダーを新規事業の責任者にして、EC事業をスタートさせました。
オウンドメディア事業で、すでに多くの見込み客リストを取得していましたので、M&Aしたサイトのアクセス数を活かしてリスト獲得の仕組み化、それに新規のEC事業を組み合わせて、加速度的に売上を伸ばしています。もちろん、退職しそうだったリーダーも続けてくれているそうです。
インドネシアに進出して1億円を投資するの一考の価値はあったかもしれませんが、より成功の確度が高く、人材の定着など投資対効果の高いことに選択と集中ができた事例だと思います。
社外取締役のBさんも、とても良いアドバイスですよね。Aさんとの信頼関係も、より深まっていると思います。
多動な経営者には選択と集中が必要です。
戦略的に「やらない」という選択ですね。
そんなアドバイスができるCSO(Chief Strategic Officer:最高戦略責任者) は、社外取締役のなかでもニーズの高い領域かもしれません。