新型コロナウイルスによって日本でも一気に加速した在宅勤務・テレワーク化。それに伴い、企業側は就業規則の見直しなどに対応する必要があります。在宅勤務でも、通勤手当・定期代を支給する義務はあるのでしょうか? また、光熱費や電気代、通信費は支給すべきなのか? 在宅勤務・テレワーク化を進める上で大切な点についてご紹介します。
在宅勤務・テレワークでも通勤手当を支払う義務はあるの?
まずは、在宅勤務・テレワークにおける通勤手当・定期代の支給について。
五三法律事務所の猿渡馨(えんどかおる)弁護士によると、
交通費・手当の扱い
「通勤手当」は、その性質上、従業員の在宅勤務期間中、支給しないという選択が合理的と考えられるでしょう。しかし、単に全従業員を対象として一定額の手当を一律支給するものとしている場合など、就業規則や賃金規程における支給要件が不明確である場合には、在宅勤務の対象者についても、企業が通勤手当等を支給すべき義務を負う可能性があるため、支給要件を明確化すべく適切に就業規則等の変更を行うべきでしょう。また、在宅勤務の期間中に企業側の都合により出社の必要が生じうる場合には、出社した日数分のみ支給する等支給要件の具体化を図ると良いでしょう。
【弁護士監修】在宅勤務の導入方法と押さえておきたい4つのポイント|d’s JOURNAL
とあり、出社した日数分のみ支給するなど、支給要件を明確にして就業規則の変更などを行う必要があるそうです。
また、別のサイトでは
「テレワーク」に切り替えた場合、交通費支給は必要ないですか?
コロナ対策で、社員にテレワークをさせた際、交通費は日割することはできるのでしょうか?また、仮に1カ月丸々テレワークさせる場合は支払う必要はないですか?
交通費については特に法令上の定めがないことから、各会社の就業規則等の定めに基づいて判断することになります。
会社に出社しない場合や在宅勤務の場合等に交通費を日割にする旨の規定があれば、日割支給も可能となります。
また、同様に1カ月間丸々出社しない場合や1カ月間丸々在宅勤務の場合等に、交通費を全額支給しない旨の規定があれば、交通費を支給しないことも可能となります。
「テレワーク」に切り替えた場合、交通費支給は必要ないですか?(人事労務Q&A)|人事のミカタ
とあります。通勤手当の支給については、法令上の定めはないため、やはり就業規則などで明確にし、従業員の方々に周知しておく必要がありますね。
定期券は払い戻しできるの?
では、すでに購入してしまった定期券は払い戻すことができるのでしょうか?
定期券の払い戻しは可能?
在宅勤務に変わったことで定期券が必要なくなった場合、払い戻しすることが可能です。あらかじめ在宅勤務を想定していた企業であれば、計画的に短期間の定期券を購入していたかもしれません。
しかし、コロナウイルスの影響で急遽在宅勤務に変更した企業では、6カ月定期券を購入していることが多いものです。経費を無駄にしないためにも、各鉄道会社の規約を調べ、払い戻しできるかを確認しましょう。
一例として、『JR東日本』と『国際興業バス』の定期券の払い戻しについて紹介します。
【JR東日本】
“不要となった定期券は、有効期間が1カ月以上残っている場合に限って払い戻しいたします”
払戻額=定期券発売額-使用済月数分の定期運賃-手数料220円
上記のように、すでに使用した月数分の定期運賃と手数料220円が差し引かれます。また、使用月数が1カ月に満たない場合でも、1カ月分が差し引かれて払い戻しされます。
月単位で何日出社する予定があるのかを計算し、実費支給のほうが安いようであれば、定期券の払い戻しを検討しましょう。ほかにも、Suica定期券の払い戻しも可能ですが、公的証明書(免許証等)が必要となり、代理人の場合は委任状や代理人本人の証明書が必要となります。
【国際興業バス】
“定期券の発売額より、利用開始日からの経過日数分の往復運賃(基準となる現金片道運賃の2倍)と手数料(530円)をお引きした金額を払い戻しいたします”
定期券の発売額-利用開始日からの経過日数分の往復運賃-手数料530円
「彩京のびのびパス」は経過日数分ではなく、6,370円×払い戻し月を含む月単位で差し引かれるので注意してください。
定期券の発売額-(6,370円×利用開始月からの経過月数分)-手数料530円
払い戻し日が月初めだった場合でも1カ月分がまるまる差し引かれるので、早い段階で払い戻し手続きを行いましょう。各交通機関の定期券の払い戻しに関する詳細は、該当会社のホームページにてご確認ください。
在宅勤務に変わった際、定期代ってどうなる?|Manegy
各社条件があったり手数料がかかったりしますが、払い戻し自体はできるようです。利用しない定期代を放置しているのももったいないですから。払い戻しできる定期券は払い戻しておくと良いでしょう。
在宅勤務・テレワークの場合、光熱費・電気代・通信費は会社が支給するべき?
通勤手当・定期代以外に、在宅勤務・テレワーク化を進める上で気になるのが、光熱費や電気代、通信費に関する手当です。これらの経費には、会社として手当を支給すべきなのでしょうか?
前述の猿渡馨(えんどかおる)弁護士によると、
光熱費・電気代・通信費はどうする?
テレワークに関わる費用を誰が負担するのかについては企業ごとに明確なルールをつくり、トラブルが起きないよう従業員に対して説明する必要があります。労働基準法第89条第5号によれば、「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」を就業規則に規定しなければならないとされています。そのため、就業規則の届出義務がある企業が、在宅勤務による費用を従業員に負担させる場合は、必ず就業規則またはこれと一体となる規程においてその旨を規定し、管轄の労働基準監督署へ届出なければなりません。
在宅勤務導入によって発生する費用の例
・情報通信機器の費用
・通信回線費用
・文具、備品、宅配便等の費用
・水道光熱費
在宅での勤務となる場合、プライベートで使用するものも多いため、全額負担か一部負担かは企業によって異なります。「在宅勤務手当」として一定額を組み込むなど、費用負担の定めを明確にしましょう。
【弁護士監修】在宅勤務の導入方法と押さえておきたい4つのポイント|d’s JOURNAL
とあります。「在宅勤務手当」「テレワーク手当」などとして、一定額を支給するという方法も良いですね。通勤手当よりも在宅勤務手当の方がうれしいという社員の方もいらっしゃるかもしれません。