「会社で新たな雇用を生み出し、成長し続けるために助成金を活用したい」と考える経営者の方は多いでしょう。助成金にはどのような種類があるのでしょうか? 今回は、数多くある助成金の中から、中小企業が利用しやすい12つの助成金についてご紹介します。
助成金はどんな制度?
『補助金・助成金・給付金とは? 今さら聞けない…けど活用したい』でお伝えしたように助成金は、厚生労働省が管轄の公的資金です。雇用を維持するための雇用関係の助成金が一般的で、要件を満たせば給付されます。
原則通年を通して申請可能で、業種や社員数など条件に合致していればほぼ支給されるため、難易度は低いと言えるでしょう。
「法令を守りつつ、従業員の労働環境の向上を積極的に図る事業に対する報奨金」という性格を持っているのが助成金です。
中小企業が利用しやすい12つの助成金
「助成金」と一言に言っても、数多くの種類があります。その中から、中小企業が利用しやすい12つの助成金をご紹介します。
1.正社員の新規雇用-最大72万円(1人当たり)
正社員の新規雇用は中小企業とって大きな決断です。人は企業の最も重要な資産ですから悩まれている経営者も多いと思います。
しかし、積極的な新規雇用が企業の力を底上げすることは確かで、国も後押ししています。
おすすめ度:★★★★★
受給額:57万円or72万円×新規雇用人数
概要:有期契約労働者等を正規雇用労働者等に転換する
受給要件:新入社員を有期雇用で採用し、半年間経過した後、賃金を5%アップした上で正社員として再契約をおこない、さらに半年間の勤務を終えて支給される
注意点:雇用して1年以内に退職すると受給できなくなる事と賃金の5%アップが必要、法人は対象者の社会保険加入が必須
2.パートタイムの新規雇用-最大36万円(1人当たり)
仕事量や売り上げに応じて柔軟に増減できるパートタイマーは企業にとって非常にありがたい人材です。しかし、パートタイマーにとっては収入が不安定など様々な不安があります。
雇用期間に定めのない雇用を行うことで、パートタイマーのモチベーションも上がります。
おすすめ度:★★★☆☆
受給額:28.5万円or36万円×人数
概要:有期契約パート等を雇用期間に定めのないパートに転換する
受給要件:新入パートを有期雇用で採用し、半年間経過した後、期間の定めがないパートとして再契約と賃金の5%アップをおこない、さらに半年間の勤務を終えて支給される
注意点:雇用して1年以内に退職すると受給できなくなる事と賃金の5%アップが必要、週に30時間を超えて勤務するものは社会保険の加入が必須
3.パートタイマーへの健康診断-最大48万円
従業員の健康管理は経営者の重要な仕事の一つです。それは正社員だけでなくパートタイマーに対しても同様です。
推奨度:★★★☆☆
受給額:38万円or48万円
概要:有期契約者やパートタイマー等を対象とする「法定外の健康診断制度」を新たに規定し、延べ4人以上実施
受給要件:会社負担で人間ドック(基本健康診断と歯周病検診で約1万円)に行ってもらう
注意点:同じ従業員も年度が変われば、再度人数として換算できる
4.共通賃金の導入-最大72万円
同じ仕事でも雇用形態や性別、役職、年齢によって賃金が異なることがあります。日本では長く当たり前とされてきましたが、世界基準では古い賃金体系です。
働き方改革においても重要なテーマで、2016年12月に働き方改革実現会議によって「同一労働同一賃金ガイドライン案」が打ち出され、2018年7月6日に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」が公布されました。その中に「同一労働同一賃金」という言葉があります。
推奨度:★★★☆☆
受給額:57万円or72万円
概要:同一賃金同一労働の考え方に基づき、同じ職務の従業員に関しては、正社員、有期雇用社員問わず、同じレベルの賃金を支払う給与体系の構築をする
受給要件:正社員と有期雇用社員に共通の賃金規定を規定し、半年以上適用した場合
注意点:例えば、同じ事務作業をする社員とパートがいた場合、社員の月給÷ひと月の労働時間=パートの時給と同じになるように設定する
5.新しい手当の導入-最大48万円
健康促進のために自転車通勤を推奨している株式会社はてなでは、自転車通勤をすると月2万円の「自転車通勤手当」が出るようです。最近はユニークな手当てが注目を集め、採用や離職率の低下、従業員のモチベーション向上につなげている例もあります。
そういう弊社も、毎月社員全員のじゃんけん大会で優勝者に臨時ボーナスが与えられる「じゃんけん手当」など、ユニークな手当てがあります。
推奨度:★★★★☆
受給額:38万円or48万円
概要:正社員、有期雇用社員、それぞれ最低1名は対象となる新しい手当の導入
受給要件:新たに設けた諸手当の対象者に対して毎月3,000円以上の手当を支払う
注意点:手当を支払う期間は最低でも1年必要
6.インターバル制度の導入-最大100万円
社員の健康管理は経営者の重要な仕事といいましたが、健康診断を受けさせるだけでは不十分です。日頃の働き方から、ストレスフリーで十分な休息が取れるようにしなければいけません。
推奨度:★★★★★
受給額:7.5万円or100万円(導入経費の75%)
概要:勤務終了時間から翌日の勤務開始時間まで必ず11時間以上のインターバルを設ける
受給要件:インターバル規定を入れた就業規則の作成(7.5万)求人広告の掲載費用(7.5万)ホームページの作成( 7.5万)その他労務関係のシステムの導入等
注意点:実際に支払った経費に応じての支給なので、先に費用の支払いが必要
7.評価制度の導入と賃金アップ-130万円
適切に評価することは、従業員のモチベーションアップ、自主的なスキルアップに繋がります。
最近は新しい技術を次々登場し、求められるスキルが変わってきています。しかし、評価制度は数年前から変わっていない、ということも珍しくありません。
推奨度:★★★☆☆
受給額:50万円or130万円(導入経費の75%)
概要:業務の評価等によって賃金の向上が見込まれる制度の導入及び実施
受給要件:人事評価制度等整備計画を作成し、管轄の労働局の認定を受け、実際に全従業員に実施すること
注意点:評価制度構築の際に従業員全員の給与を2%あげることが必要になっている(基本給に加えて固定の手当など全てが対象)
8.離職率をさげる取り組みを行う-最大72万円
離職率が高いと、採用コストがかかり続けるうえ長期的な事業計画、スキル・ノウハウの蓄積に悪影響があります。助成金によるサポートもありますが、離職率を下げる取り組みは積極的に行うべきでしょう。
推奨度:★★★★☆
受給額:57万円or72万円
概要:正社員を対象に人間ドッグをおこなう制度を取り入れ、1年前と比較し離職率が下がっていれば受給される
受給要件:人間ドッグの実施(健康診断+歯周病検診)1万円以下の安価なものでも可。離職率が1年前と比べてさがっていること
注意点:従業員10人以下くらいの規模であれば、1年以内に1人でも雇用保険被保険者が離職すると対象にならない
9.働き方改革に伴う従業員の採用-最大75万人(1人当たり)
働き方改革で残業を減らした、しかし仕事の量は変わっていない。新しいツールの導入等で補えたらいいですが、新しい人を雇うのが現実的な選択肢でしょう。
推奨度:★★★★☆
受給額:60万円or75万円
概要:働き方改革の導入で不足した人員をおぎなうための新規採用をおこない1年以上従業員が定着した場合に支給
受給要件:インターバル制度導入の認定を受けている事業所であること、計画期間内に採用した従業員が1年以上勤務が続いたこと
注意点:新しくできた助成金で運用しながらのルールづくりであり、労働局から突然の条件変更などを指示される可能性が高い
10.経験が未熟なスタッフを育成する-最大75万円
企業の長期的な業績は、従業員の教育によって決まるといっていいでしょう。従業員のレベルが上がらないと、当然仕事のレベルも上がりません。教育に対する投資は数年後大きく帰ってくると考え、積極的に行いたいです。
推奨度:★★★★☆
受給額:訓練時間×760円(最大6か月で約60万円) / 社外研修費用109万円(当社指定の20時間)
概要:正社員を目指す有期契約労働者を対象に、社内訓練等をおこない能力の向上に取り組んだ事業所に助成
受給要件:OJT(事業活動中におこなう実務訓練)とOff-JT(事業活動以外の訓練)を組み合わせておこない訓練日誌にて日々の所感を報告すること
注意点:訓練日誌は毎日記入が必要なこと(毎月提出の期限に遅れると不支給になる)、訓練開始前におこなうキャリアコンサルティングは別途費用が必要(16,200円)
11.メンタルヘルスチェック等を導入-最大10万円
健康管理に関する助成金には様々な種類があります。健康診断などで体の健康も大切ですが、メンタル(精神・心)の健康も忘れてはいけない健康管理です。
推奨度:★★★★★
受給額:10万円
概要:産業保険総合支援センターに在籍するメンタルヘルス職員からの指導に基づき、メンタルチェック等のシステムを導入した会社に支給
受給要件:メンタルヘルス職員と2回の打ち合わせ(1回20分程度)と1回の指導(約1時間)を受けると助成される(受講者は経営者、従業員どちらでも可能)
注意点:人気の助成金なのでタイミングによっては、締切の可能性あり出来るだけ早く申込みをおすすめします
12.生産性向上の投資を行う-最大100万円
生産性向上は言われるまでもなく、企業活動の重要なテーマです。生産性向上のために積極的な投資を行い、その利益を従業員に還元することで支給される助成金もあります。
推奨度:★★★★★
受給額:100万円
概要:生産性向上の投資などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成される
受給要件:1.賃金引上計画を策定し、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる / 2.引上げ後の賃金額を支払う/ 3.生産性向上に資する機器・設備などを導入することにより業務改善を行う/ 4.解雇、賃金引下げ等の不交付事由がない など
注意点:人気の助成金なのでタイミングによっては、締切の可能性あり。出来るだけ早く申込みをおすすめします
【助成金制度一覧】中小企業が令和元年に利用できる12種類の助成金|Grab
この他にも多くの助成金がありますので、気になる方は一度、当協会にお問い合わせください。